2019/07/04
7割の社員はやる気がない、は本当か?
愛知県名古屋市で中小企業の業績アップを親身にサポートする経営コンサルティング事務所、レイマックの豊田礼人(とよたあやと)です。
1.最下位レベルのやる気
「ああ、やっぱりそうか」と納得するか。それとも「うわ、意外だな」と驚くか。
人材コンサルティングの米ギャラップが世界各国の社員の士気を比較した調査によると、日本にはやる気のない社員が他国に比べて多いようです。(2019/619日本経済新聞14面)
・「熱意あふれる社員」の割合
日本 6%(139か国中132位)
米国 32%
最下位レベルで、日本の社員は熱意が無い、ということみたいです。
さらに日本は、
・「やる気のない社員」の割合は全体の70%
・「不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は全体の24%
なのだとか。
つまり日本は、世界的に見ても有数の「やる気のない社員大国」ということになっているようなのです。
あなたの会社ではどうでしょうか?また、あなた自身はどうでしょうか?
2.経営者の最も重要な仕事
経営者であるならば、社員のやる気を高めたいと思うのは当然です。そして日々、「どうやったらうちの社員のやる気を高められるのか・・・」と悩んでいるかもしれません。
しかし悩む必要はありません。
この調査結果を見ると、社員のやる気が低いのは個々の会社の問題ではなく、また経営者の問題でもなく、もちろん社員の問題でもなく、国全体の問題であることが分かります。その根底には日本の会社の仕組み(年功序列・終身雇用・新卒一括採用など)だけでなく、教育や、歴史や、もしかしたら日本人の気質に原因があるのかもしれません。
こういう状況の中で経営者がまず心得ないといけないのは、そもそも熱意あふれる社員は極端に少ないのだ、ということです。ここがスタート地点です。ですから、仮に会社内にやる気のない社員がいたとしても、嘆く必要はありません。まずは「そういうものなのだ」と受け入れるです。そのうえで、「どうやったら少しでもやる気を高めてくれるのか」について考えていくアプローチが必要です。
3.誰がやっても成果が出る仕組み
そもそも、やる気のない人のやる気を高める方法ってあるのでしょうか。これはなかなか難しい問題です。給料を上げたり職場の環境を良くするだけではやる気は高まらないことは多くの研究結果により実証済みです(動機づけ衛生理論など)。
また別の研究によると、やる気アップの可能性が見込める最も重要かつ本質的なことは、「仕事そのものを好きになってもらう」ことなのだそうです。「それができれば苦労ない!」と叫びたい気持ちは分かります。しかし、「仕事そのものが好き」であること以上に、本質的・継続的にやる気を高める方法がないことも理解できます。誰しも過去に時間を忘れて何かに熱中した経験があると思います。そういうものを仕事にできれば、高いやる気を持って取り組めるはずです。ダニエル・ピンクはこのような自分の内面から湧き出る「内発的動機」に勝るやる気の源はないと言っています。
そうであるならば、社員のやる気を高めるにはその仕事を好きな人を集めるか、仕事を好きになってもらうように経営者が努力するしかありません。難しいけど、やる気に燃える集団を作りたいのなら、やるしかありません。その第一歩は、経営者自身が仕事を好きになることです。そしてその好きな気持ちを社員に伝染させていくのです。単純なことですが、とても重要なアプローチです。
「そんなの絶対に無理!」というあなた。仕方がありません。そういうあなたに残された道は、「どんな社員がやっても成果が出る仕組み」を構築するという道です。これは、経営者の非常に重要な仕事です。世の中に数%しかいない「熱意あふれる社員」でなければ成果が出ない仕事のやり方というのは、考えてみればとてもリスクの高いやり方です。偶然そういう熱心な社員がいるときは良いですが、いなくなったときには大変なことになります。ですから、誰がやっても成果がでる仕組みを作り上げることは、リスクを低減する意味でも極めて重要な経営者の仕事だと言えます。
4.危機感というエンジン
もうひとつ、危機感が高まるとやる気が高まる、という説もあります。私も実はこの「危機感」でやる気を高めているタイプです。告白しますが、私は会社員時代、お世辞にも熱意溢れる社員とは言えませんでした。間違いなく、「熱意のない94%の社員」に入ったことでしょう。
それが独立した今、熱意とやる気を持って日々仕事に取り組んでいます。当然と言えば当然ですが、独立起業すれば、自分がやらなければ事業は止まります。努力を怠れば、淘汰されます。大げさに言えば、死にます。私は起業当時も今現在も「やらなきゃ死ぬ」と思って、自分を奮い立たせています。危機感に突き動かされて、活動しているのです。もちろん仕事そのものも好きなので、「好き」と「危機感」が噛み合って、強い前への推進力が生まれていることも実感しています。
経営者が新年のあいさつなどで社員に向かって「厳しい時代です。危機感を持って仕事をしよう!」と呼び掛けることがありますが、会社という組織に守られている社員が、そのままの状態で危機感を持つことは難しいでしょう。
中小企業の経営者は社員を雇い、社員の生活に責任を持ち、会社が倒産すれば破産するかもしれないという強い危機感にさらされています。その一方で、雇われている多くの社員は危機感を抱きにくい環境にいます。ここでどうしても経営者と社員の間の熱量に差が出てしまいます。これは立場の違いからくるものなので、良い悪いという問題ではなく、このことに文句を言ったり嘆いても意味がありません。「そういうもの」と理解しなければ、前に進むアイデアも湧いてきません。
5.エンゲージメントも低い日本
さて、ここで別の調査を見てみましょう。米IBM(2016)が行った「従業員エンゲージメント指数」という調査です。
「エンゲージメント」とは従業員が仕事に生き生きと向き合う度合いを示す指標です。言われたことを忠実にこなす受け身のまじめさではなく、改善や新機軸に主体的に、意欲に取り組む姿勢を指します。
このエンゲージメントの国際比較調査で、またしても日本は最下位レベルだそうです。(2019/7/1 日本経済新聞7面)
つまり、日本の会社は自ら発案しない社員の集合体なのだ、と言われています。これでは生産性は高まらず、目を見張るイノベーションも生まれない。日本の会社が海外企業に差をつけられているのは、これが原因かもしれない、と新聞は報道しています。
6.心理的安全性を高めてイノベーションを起こせ
グーグルは、組織の活力を高め、イノベーションを起こすためには「心理的安全性」が重要だということを突き止めました。
心理的安全性とはもともと米ハーバード大の研究者が唱えた概念で「この職場(チーム)なら何を言っても安全」という感覚を構成員が共有する状態を指します。
何かいいアイデアがひらめいたらすぐに発言し、実行に移す。仮に新しい試みが失敗に終わっても、嘲笑されたり、罰せられたりもしない。この安心感が、エンゲージメントを高め、イノベーションを生むのだそうです。
こんな「心理的安全性」の高いチームは仮に個々人の能力が劣る場合でも、「安全性」の低いチームに比べて高い成果を上げ続けることが判明したのだそうです。(同新聞)
グーグルはこの結果を受けて次のような管理職向けの心得集をまとめたそうです。
①部下と話すときは、知らぬ間に否定的な表情を浮かべていないか注意する。
②チームメンバーから学ぼうという姿勢で質問する。
③問題が起きても、相手を責めるような言い方はせず、どうすれば問題を解決できるかに焦点をあてる。
どれも、真新しいことではありません。組織運営の本を開けば、必ず書いてあるようなことばかりです。しかし、「知っていても、できていない」というのが日本の会社の実体なのでしょう。だから、エンゲージメント指数で最下位になっている・・・。
グーグルは、このことを再認識し、あらためて明文化し、組織の中に植え付ける努力をしているのだそうです。小さな積み重ねですが、こういうコツコツとした取り組みが大きなパワーを生み出す源泉になっているのだと思います。
ですから、日本の経営者も社員が心理的安全性を感じられるように、上記のことから少しずつ始め、社員が積極的にものを言える風土に変えていってはいかがでしょうか。小さなことからコツコツ、です。その積み重ねが、数年後に大きな成果を生み出すと思います。
7.社員として、あなたはどうするか?
さて一方、社員の立場から考える「やる気」についても触れておきましょう。
自分のやる気がどうも高まらない。仕事に熱意もないし、社内で積極的に発言することもないというあなた。これはサラリーマン時代の私自身のことでもあります。
そういう人は、まずは、「周囲の状況は自分が作り出している」という認識に立ってみてはいかがでしょうか。平たく言うと、周囲は自分の鏡だ、ということです。会社に認められない、上司に認められないと不満を持っているならば、まずは会社を認め、上司を認め、同僚や後輩を認めることから始めるということです。周囲を認め始めたあなたは、周囲に良い影響を与える人になり、人間として余裕が生まれ、そして周囲から認められるようになるでしょう。まずはここから始め、周囲から認められる自分を作りあげてみてください。そうすると、少しだけやる気が高まるかもしれません。
自分の好きなことを仕事にすることも、やる気を高める上では大切です。現在の仕事が好きでないとしても、仕事をとらえ直すことで、少しは好きになれるかもしれません。
例えば、海外青年協力隊に入って、水道のない地域で井戸を掘り、住民たちに感謝されるような仕事をしたいと思っていた人の話を聞きました。その青年は家業を継がざるを得ない状況になり、自分の夢は断念しました。しかし、「国際貢献して感謝されたい」という思いを現在の仕事に置き換えて考えた時、「お客さんに喜ばれ、地域社会の役に立ちたい」という思いが出て来ました。今では家業を通して世の中に貢献し、生き生きと仕事をしています。面白くないと思う仕事をとらえ直し、面白くしていくというアプローチです。
それでもどうにもならない場合、仕事以外のことに生きがいを見出して生きていくことも否定されるものではありません。仕事は成果を出すことが重要であって、やる気がなくとも成果が出ていれば何の問題もありません。自分の中で折り合いがついていれば、外野がとやかくいう問題ではありません。
一方で、かつての私のように、仕事に情熱はないのだけれど、かといってその状態のまま生きていくこともツライという人は、やりたい仕事を求めて転職するか、起業するという選択になります。危機感をより強く持って自分を焚き付けたいのなら、起業という選択肢を具体的に検討してみるのも良いと思います。環境を変えないまま自分を変えるのは結構難しいです。リスクを覚悟して環境を変えると、自分がガラリと変わることがあります。(それでも起業は大変なので慎重に)
どういう仕事の仕方をするのが、自分の生き方として満足感が得られるのか。仕事の仕方は人生の過ごし方と大きく関係します。
自分はどう生きたいのか。これを問うところからがスタートです。
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~講師のプロフィール~
大学卒業後、東証一部上場企業、人材ベンチャーを経て、経営コンサルティング事務所レイマック・コンサルティングで起業。会社員時代からHPなどでマーケティングを実践し、起業前に300万円のコンサル案件を中堅企業から受注。その後も営業活動ゼロで、コンサル顧問先を数十社獲得。また公共体の中小企業支援にも関与し、合わせて500社以上の経営支援に携わってきた
豊田礼人のさらに詳しいストーリーはこちら↓
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