2006/12/22
第88号【あなた比較されている】
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■消費者の行動
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モノを買うときの消費者の行動プロセスで良く知られているのは、
AIDMA(アイドマ)モデルと呼ばれるものです。
Attention その商品に注目し、
Interest 興味を持ち、
Desire 欲しいという欲求を抱き、
Memory それを記憶しておき、
Action 購買という行動を起こす
というプロセスを経て、消費者は購買を実施する、というものです。
しかし、モノがあふれ、インターネットなどで情報が簡単に集められ、
しかも消費者が成熟している現代社会では、上記のプロセスの間で
「比較」という作業が必ず入るようになって来ています。
よりいいものを少しでも安く、そして少しでもいい気分で消費したい
と考えている人が多い時代です。モノやサービスを売る側は常に徹底
的に比較されていると考えた方がよいでしょう。
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■店の中でも比較している
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お客さんは、あなたの会社(店)とライバル会社(店)とを比較して
います。商品やサービスの品質、それに見合った価格かどうか、また
は接客担当者のレベル、クレーム時の応対、店の新しさや掃除の行き
届き具合、さらには雰囲気という抽象的なものまでを含めて、ありと
あらゆる情報を処理し、そして比較し、あなたの会社(店)で買うか
どうかを決めているのです。
そして、様々な比較検討の結果、めでたくあなたのところで買うこと
を決めたとします。しかしその後も、どの価格帯の商品を買うか、その
価格は品質やデザイン・量などから見て妥当な水準か、などについて、
お客さんは比較し続けます。
例えば、よくある話で、価格ラインが松・竹・梅の3ラインある場合、
真ん中の「竹」を選ぶ客が多いと言われています。700円と
1000円の2ラインの時は、700円の方が良く売れていたのに、
1500円の商品を追加したとたんに1000円のものが売れ出した、
という例です。
消費者は「比較したい」のです。しかもたくさんのものを比較し、「選び
たい」のです。決して押し付けられたくないのです。そして、比較し疲れ
た時や、情報を処理しきれないとき、「真ん中」を選ぶのです。
電報を頼むとき、受付の女性から、
「1000円のノーマルタイプ、2000円の押し花電報、2500円
の刺繍電報がありますが、どちらにされますか?」と問われると、必
ず「じゃ、押し花で」と反射的に答えてしまいます。
価格とモノの品質やデザインを比較したいのですが、電話では情報を
処理できないので、「ま、真ん中なら無難でしょう」という行動をし
てしまうのですね。
しかしこの場合でも、「3案の中から自分で考え、選んだ」というプ
ロセスがあるから、お客さんはある程度の満足感は得られます。
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■長崎ちゃんぽんの比較
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長崎ちゃんぽんで有名な「リンガーハット」の価格政策についての取
り組みが、12月20日の日経MJで紹介されています。
リンガーハットでは、主力メニューの「長崎ちゃんぽん」を約50円
値上して450円に改定しました。すると、一日の注文数の40%を
占めていた同商品が37%に低下することになったそうです。
看板商品からの客離れが起きたわけですが、別の現象も起こりました。
価格が少し上の「とくちゃんぽん」(500円)の注文率が10%から
15%に跳ね上がったのです。
従来は「長崎ちゃんぽん」と「とくちゃんぽん」の価格差が約100
円だったのですが、「長崎ちゃんぽん」の値上で差が50円に縮まった
のです。ここでお客さんの「比較魂」がむくむくと湧き起ります。
「50円差だったら、この際ワンランク上の高い方を食べようよ。
その方がお得感があるよね」
という意思決定をするお客さんが増えたということなのです。
この話は、ウチの奥さんのお姉さんファミリーがとった、実際の
行動です。リンガーハットの戦略に見事ハマッた訳ですね(笑)。
リンガーハットの場合、「3ラインの真ん中」戦略とは異なる戦略で
すが、商品の品質と価格とのバランスを瞬時に比較し、シビアに購買
活動をする現代の消費者を良く研究し、成功した事例だと言えるでし
ょう。
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■自分レベルの視点で
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私たちが自分の仕事、生活、生き方について考えるときも常に「比較」
という作業を無意識にしています。
その場合、ついつい他人の仕事や年収、さらには学歴や財産などにつ
いてまで自分と比較し、満たされていない自分に対してガッカリした
り、いつまで経っても埋まらないライバルとの差を思って落ち込んだ
りもします。
ビジネス雑誌では「日本人の給料」とか「この冬のボーナス特集」と
いう記事で私たちを刺激してきます。他人の給料が気になる気持ちは
分からないでもありませんが、それを見ても生産的なことは何も生ま
れません。
「比較」という作業には2通りあります。ひとつは「他との比較」
です。先述した給料の例はまさにこれですね。自分レベルの場合、
これはほどほどにするべきだと思います。
もう一つの比較は、「過去の自分との比較」です。
現在の自分は過去の自分と比較して、どれくらい成長したか。
これを考えることは非常に生産的です。努力していれば、度合いは別
にして確実に成長していることが実感できるはず。
逆に、過去の自分より後退していることもあるかもしれません。
そういう場合も真摯に受け止め、改善のための努力をすることになり
ます。
過去の自分と現在の自分との比較作業。そこには誰にも分からない
「真実」があります。自分に嘘はつけないですからね。
隣の芝とばかり比較していても始まりません。それよりも自分の庭の
芝がしっかりと根付いているかどうかを、確認してみてはいかがでし
ょうか。
1年前の自分と今の自分とでは何が違うのか?
お正月、お雑煮食べながら、私もやってみます。
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■編集後記
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最近クライアントに頼まれて「手書きPOP」について研究しています。
キレイに印刷されたPOPよりも、最近では一枚一枚手で書いたPOP
の方が効果が高いといわれています。POP文字も書き方があって、専
門書も出ています。それを見ながら書いていたらかなり上達してしまい
ました。そうなると書きたくて書きたくてしょうがなくなってくるん
ですね(^^)紙に意味もなく自分の名前をPOP文字で書きまくって
しまいました。年賀状もまだ書いていないのに、何やってんだか・・・。
(第88号終わり)
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