2008/05/30
第163号【マーケットを引っ張れ】
【マーケットを引っ張れ~マーケットプルという考え方~】
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■プロダクトアウトとマーケットイン
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※執筆者・豊田礼人の抱腹絶倒の起業物語はこちらから※
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お客様の声を聞かずに作りたいモノをつくり、売りたいモノを売ると
いう「プロダクトアウト」の発想では、モノは売れないと言われています。
このプロダクトアウトという考え方の根底には、「いいモノをつくれば
売れるという」提供者側の思いがありますが、モノが溢れている現代
においては通用しにくい考え方だと言われています。
消費者はたくさんのモノや情報の中から、本当に自分が欲しいと思う
モノやサービスをピンポントで見つけ出し、それらに対してのみ財布
のヒモを緩めます。そのピンポイントを外してしまうと、いくらいい
モノであっても購買の対象にはならないのです。
ですから、こういったわがままな消費者のピンポイントなニーズ、つ
まり「お客様の声」を聞いて商品企画や販促企画を行なわなければい
けないという「マーケットイン」の発想が必要だと言われているのです。
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■「イン」の弊害
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しかし一方で、お客様の声を聞きすぎると「売れない企画」になって
しまうという側面もあります。
お客様の声を集めて商品企画や販促企画を行なうと、大きく分けて2
つの方向に結果が向かうことになります。
一つは、色々な意見を集約して一つの解を得ようとするために、結局
当たり障りのない「丸い」企画、あるいは商品になってしまうという
ことです。
かつての日産自動車はスカイラインやフェアレディZなど個性溢れる
車の開発で人気を博しました。これは開発者のプロダクトアウトの発
想が、良い方向に働いた結果ですが、その後お客様のニーズをリサーチ
して開発するマーケットインの発想を取り入れ過ぎたため、車に個性
が無くなり売れなくなってしまった過去があります。これはマーケット
インの弊害だったと言われています。
もう一つは、お客様の「良い」という意見のみを取り入れ、「良くない」
という意見を排除して企画・開発を進めることによって生まれる弊害
です。これを進めると一部のファンにのみ支持されるマニアック過ぎる
商品になってしまう恐れがあります。
良いと言ってもらうと嬉しいので、その意見に従って企画や開発を進め
てしまうのですが、その結果できあがったモノやサービスがその事業
を支えるだけの売上を確保できなければ意味がありません。商品やサー
ビスを企画・開発する際には、そこに十分な規模の市場が存在するか
どうかという見極めが非常に大切になってくるのです。
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■マーケットをプルしていく
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こうしたマーケットインの弱点を補うため、最近では「マーケットプル」
という考え方が出てきています。マーケットインから一歩進んだ考え
方です。
マーケットプルとは、自分たちのコンセプトをしっかり持ち、ターゲッ
トをしっかりと設定することを前提にして、そのターゲットとなるお
客様が潜在的に持っているニーズ(顕在化していないことがポイント)
を想像して呼び起こし、マーケットを誘導していくという考え方です。
インテリアショップFrancfrancの代表である高島郁夫氏の言葉を借り
れば、「マーケットプルとは、お客様の気持ちの中の潜在的ニーズを感じ
取り、具現化して示すこと。『何で私の欲しいものがわかったの?』
『ホントFrancfrancって心憎いわ』と思っていただけるようにする。
それを繰り返すうちにインするのではなくマーケットをこちらが誘導
できるようになる」ということです。
マーケットにインしすぎて、商品が丸くなりすぎたりマニアックに
なりすぎるとモノは売れない。かといってプロダクトアウトの発想で
もピントがズレていたら、売れない。
ポイントは、ターゲットのことを良く知った上で、そのターゲットが
喜ぶモノを創造力豊かに、そして提供側の思いも注入しながら企画・
開発していくことが大切だということです。マーケットインとプロダク
トアウトの良いところを混ぜ合わせた考え方が、マーケットプルにつ
ながるのだと思います。
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■自分レベルの視点で
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さてさて、自分レベルではどうでしょう?
今回小冊子を作っていく段階で、このマーケットインについて考える
ことがありました。
当初は自分の決めたテーマに沿ってひたすら書き進めていました。自
分が経験したことや学んできた知識を吐き出し、整理してまとめ上げ
れば絶対にいいモノが出来るはずだと信じていました。まさにプロダ
クトアウトの発想です(笑)。
しかし、さすがに外部の客観的な意見も取り入れないとひとりよがり
のものになる恐れがあると思い、友人や仲間のコンサルタントなどに
読んでもらい、意見を収集しました。その意見を取り入れながら、
修正・追加・削除などを行いました。マーケットインの発想ですね。
この過程で、確かに自分では気づかない貴重な意見をもらい、内容が
充実したことは間違いありません。しかし、全体的な「匂い」とか
「雰囲気」は、自分の感覚を信じ、そこは外部の意見に流されすぎな
いようにしました。その根底には、インしすぎると没個性になってし
まうという自分なりの恐れがあったからです。
周りの声を聞くことも大事。
しかし、それに迎合しすぎると自分らしさが無くなってしまう。
あるいは、たまたまもらった意見に流され、マニアックになり過ぎて
しまう。
インとアウトのいいとこ取りをして、プルしていくイメージ。
このバランスが大切なのだと感じています。
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(第163号終わり)
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