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豊田礼人の基本的な考え方を
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2008/10/31

185号【勝とうとしちゃダメ】

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■勝とうし過ぎている
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相手を論破して、言い負かして、何か得することがあるでしょうか?

気分がスッキリする?確かにそうかもしれません。但し、それはほん
の一瞬だけのこと。長期的にみれば、より大きな問題を抱えこむこと
になるかもしれません。

例えば同僚とささいなことで議論をしていて、自分と異なる意見をぶ
つけられた時。こういう時、ボクたちは自分の意見がいかに正しいか
を相手に訴え、何とか分かってもらおうとします。つまり議論に勝と
うとするのです。

そのために、相手の主張のアラを探し、そこを攻撃することで相手を
封じ込めようとする。相手がひるんだ所にさらに追い討ちをかけて攻
め込み、相手を打ち負かそうとするのです。そんな経験ありませんか?

しかし、相手との議論に勝ったとして、何か意味があるのでしょうか?
その負かされた相手は、「確かにあなたの言うとおりだ。私が間違って
いた。申し訳ない」と思うでしょうか?

論戦に打ち勝ったあなたにひれ伏して、あなたを誉め讃えるでしょうか?

そんなことは「絶対に」ありえない。ノーです。

ただ、あなたに対する怒りと不満が生まれるだけです。

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■目の前の「勝ち」が、成功を遠のける
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会社の中でも相手に勝つための議論が渦巻いています。

上司は部下の営業マンに、なぜ目標数字が達成できないかを問い詰め
ます。上司は「できるはずだ」と迫り、部下は「できない」理由を
延々と並べ立てます。

お互いに譲らず、議論は平行線のまま。上司は部下をねじ伏せ、目標
達成をコミットさせようとします。部下も負けじと、上司の要求がいか
に妥当性を欠くか、ということを主張します。

こういう時、例えば上司が「会社命令だから従え!」と強権を発動し、
無理やり数字を押し付けることは可能です。実際多くの企業ではこう
いう目標数字の設定方法が行なわれています。

しかし、こういう方法で上司が部下に「勝った」として、意味がある
のでしょうか?

無理やり押し付けられた目標は、おそらく達成されないでしょう(いや、
絶対に!)。他人が設定した目標をがんばって達成しようと思う人は、少
数派であるといわざるを得ないでしょう。

論戦に(一時的に)勝って、相手を押さえつけたとしても、そこに
生まれるのは怒りと不満だけ。目標は永遠に達成されず、議論に費や
した時間は無駄だった、ということになります。

ボクたちは一時的な「勝ち」を求めるあまり、大きな成功が遠のいて
しまっている、という事実に気づくべきです。

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■自分に「勝つ」ことに意味がある
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先日、ある会社にプレゼンにいきました。

事前に聞いていた内容を踏まえ、それを解決する方向でプレゼンを進
めたのですが、相手は浮かない顔をしています。

説明し終わった後、感想を求めると、あれやこれやとダメだしをして
きます。こちらが事前に聞いていた内容からは推測しきれない条件が
色々と出てきて、そこにズレが生じ、不満なようなのです。

正直言って、少しムッとしてしまい、いかに自分の提案が良いか、
自分は悪くないか、相手の発注の仕方が悪いか、などを遠まわしに
言い(あくまで遠まわしに)、その場を後にしました。

しかし、帰ってきて冷静に考えてみると、そこで相手の不備な点を
攻撃して、自分の正しさを立証できたとして、そこに何か意味がある
のか?と思ったのです。

それをしたところで、相手は「自分が間違っていた。すみません」と
思うはずもなく、逆に「アイツめ、生意気な!絶対に発注するもんか!」
と思うだけだと思うのです。

結局、相手を論破したところで、気分がイイのは一瞬で、それと引き
換えにせっかくのチャンスを失うというツケは自分に回ってきます。

そう思いなおし、修正案を急いで作り、再度その会社に送りました。
結果は分かりませんが、考え方を換えてすぐに対応した自分を少し
誇らしい気分になりました(自分で誉めていますが笑)。

本当の意味で「勝つ」ということは、自分を乗り越えることなのかも
しれないな、と思いました。

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■自分レベルの視点で
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さて、自分レベルではどうでしょう?

夫婦間、親子間、兄弟間でも、いつもボクたちは「勝とう」として
いる気がします。

本当に大事な人とケンカした時でさえ、相手を打ち負かし、徹底的に
勝とうとしてしまいます。

例えば、あなたが車を運転して、巷で評判のパン屋さんを探している
とします。

同乗しているパートナーが「こっちよ」といった道順が間違っていて、
その結果、遠回りするハメになってしまったとします。その時、その
ことを追求して責め立て、相手を打ち負かしたところで、一体何の意
味があるでしょうか?それで誰が得をするのでしょうか?

「あなたの情報はいつも不正確だね!」と過去の失敗を持ち出して相
手を追い込んだとして、一体、そのことにどれほどの価値がある?

自分が一瞬気持ちイイだけ。つまり、エゴ。その代償にパートナーの
心の奥を傷つけてしまっている(!)。

ボクたちは時として本当に勝たねばならない重要な場面に直面する。
その時は、死に物狂いで勝ちにいかなければならない。

しかし、ささいなことにさえ「勝とうとする」クセは、すぐにでも
直さなければいけないと思います。

大切な人に勝ったところで、そこには何も無いのですからね。

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