2019/06/11
1000円の海苔弁に見る遠山社長の戦略
愛知県名古屋市で中小企業の売上アップを支援する経営コンサルティング事務所、レイマックの豊田礼人です。
※写真は 刷毛じょうゆ海苔弁山登り WEBサイトより転載。
スープストックトーキョーを展開するスマイルズ(東京・目黒)が次々とユニークな事業を生み出している、と日経MJが報じています。
例えば、週末には入場制限がかかる入場料1500円の書店や、1000円の高級なのり弁を販売する弁当店など、常識破りなそのスタイルが話題になっています。(日経MJ2019年6月3日)
まず、2018年12月東京・六本木に生まれた「文喫」は、入場料1500円を取る書店。この書店に行列ができ週末には入場制限がかかるのだそうです。
この書店の特長は陳列の仕方。一般の書店は「作者別」「出版社別」に分けて陳列しますが、文喫では想定外の書籍との出会いを誘うように陳列されている。この陳列方法は「なぜ、普通の書店では出会いが少ないのだろう」という疑問から生まれたそうです。
またおしゃれな書店に行くとアート本などが天井付近に飾られているのに対し、文喫ではすべての本が女性でも手が届く位置に並べられているそうです。これも「なんで、手に取れない場所に本を置くの?」という疑問が出発点になっています。
コンビニや持ち帰り弁当店では1個350円ほどで買える「海苔弁」を1000円で売る「刷毛じょうゆ海苔弁山登り」(東京・中央)というお店。この店の出発点は「なんで『海苔弁』は安いイメージなんだろう」という疑問。
そこから有明海産の新芽の海苔や大ぶりの焼き鮭を使い、1個1080円の海苔弁を開発。販売し始めると、その意外感が受け、連日行列ができる人気店になり、東京駅に2号店も出したそうです。
これらの事例から、学べることは、世の中にすでにあるものだが、顧客が感じているちょっとした不満や不便・不利益を見つけ出し、事業化すると立ち上がりやすいということです。
つまり、世の中に全くない奇抜なものを提案するのではなく、既にあるものをちょっと違った角度から再定義しているのです。そこに新しさを感じさせています。
人々が全く見たことがないものは、市場がない可能性がありますが、本屋も海苔弁もそれぞれ既に世の中にあり、市場はあります。そのうえで不満などを見つけ出し再定義しているので、外れる可能性は低い。
中小企業や個人が新しいビジネスを構想するとき、自分の強い思い込みをベースに、市場があるかないか全くわからない「突拍子のないもの」を作ってしまうことがあります。これは、ライバルはいないかもしれませんが、お客さんもまったくないない、というエラーを引き起こしてしまいます。
スマイルズのうまさは、既にあるもの(書店や海苔弁)を「なんでこうなっちゃうの?」という疑問を出発点にして再定義していくところだと思います。スマイルズの主力業態「スープストックトーキョー」も「なんで健康的なメニューを置くファストフード店は少ないのだろう?」というふとした疑問がきっかけだったそうです。
もうひとつのポイントは、独自のアート感覚。スマイルズが手掛ける事業は、どれもデザイン性に優れていて、楽しく、オシャレなんですね。人々は、ビジネスモデルの斬新さとデザイン性のカッコよさ(かわいさ)に惹かれ、スマイルズの店に入り、商品を手に取ります。遠山社長はこう言います。
「我々のビジネスはアートに似ている。芸術家はマーケティングして人々の顔色を伺いながら絵を描かない。自分の発想に従うだけ。アートは自己体験という「内側」からスタートする。我々も同じ」
既存のものを見た時に自分の中から出て来る「なんでこうなるの?」からビジネスを発想し、それをカッコ良くてかわいくておしゃれなデザインで魅せる。
スマイルズが切り開いていく道に、ヒントがたくさん落ちています。(了)
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