2018/06/09
2ステップ起業という選択
何の後ろ盾も経験も無い人が「起業」するのは本当に恐い。そういう人に気軽に起業を勧めることはできない。チャレンジすることは尊いですが、当然、失敗するリスクもあります。家族があって、ある程度のお金を稼がなければならない人の起業は、特に慎重に考えなければなりません。
2ステップ起業。
これは、安定した組織(大企業や官公庁)に勤めるサラリーマンが、組織を辞めていきなり起業するのではなく、一旦小さな会社に転職し、そこで存在感を高めながら上層部に自分の要望を聞き入れてもらえる環境を作り、起業の助走期間としながらゆるやかに飛び立っていく方法です。
つまり2段階(2ステップ)で起業する、という方法。
もっともらしく言いましたが、これは意識的に作った方法ではなく、たまたま僕の起業までの展開が結果的にそうなった、というものです。しかし、振り返るとこの方法は僕のような小心者が起業するにはとても良い方法だった、と思うのです。
僕は、以前は東証一部上場の大企業に勤務するサラリーマンでした。しかし「何者かになりたい」という気持ちと、その会社で定年を迎える気持ちになれなかったことなどが絡み合い、ある時から中小企業診断士という経営コンサルティングの国家資格にチャレンジし始めました。
この資格試験には1次と2次があって、1次試験に受かった33歳の時、本格的に2次試験にチャレンジしたいという理由で(本当はその会社の勤務に疲れ果てて)、会社を辞めたのです。既に結婚もしていて、背水の陣でのチャレンジでした。妻も応援してくれていました。そこから半年間、2次試験に向けて勉強だけに集中する日々が始まりました。
しかし、半年後に受けた試験に、落ちました。
そのとき、「背水の陣でチャレンジする」という方法は僕にはストレスがかかり過ぎるため、働きながら試験にチャレンジする作戦に変更しました。そこである小さな人材系の会社で営業職として働き始め、働きながらさらに2回落ちた後、ようやく資格を取得することができました。
しかし資格は取得したものの、すぐに起業するには至りません。独立・起業して、生活していけるだけのお金を稼げるかどうか、まったく自信が無かったからです。それで会社を辞めようかどうしようか、グズグズしている時期がありました。
そんな頃、勤めていた人材会社の社長・取締役と僕が衝突してしまうという事件が起きました。それでいろいろとモメた後、会社を辞めることを決意し、辞表を出しました。あまり詳しくは書けませんが、社長との間にあった信頼関係が壊れてしまいました。しょうがない。これもきっかけだ。いよいよ、起業する時が来た。そんな気持ちでした。
このことを妻に告げると、さすがに戸惑いを隠せない様子でした。その時点でマンションのローンがあり、長男が生まれたばかりでした。妻自身が働きに行ける状態にない中で、夫の収入がゼロになるかもしれない「起業」という選択に対して、戸惑うのは当たり前。しかし、僕の決意は固かったし、これまでの僕の資格試験に粘り強く取り組んできた過程を見てきた妻は、最終的には応援してくれることになりました。
辞表を出した2日後。突然、自宅にある会社から電話がかかってきました。それは、業績不振に悩む中堅企業の経営幹部からの電話でした。内容は、コンサルタントの導入を検討しているので、プレゼンをしてほしい、というものでした。
ヒアリングをしたうえで経営陣にプレゼンをすると、あろうことか、合格。年間で300万円のコンサルティング契約を結ぶことができたのです。収入ゼロ状態での起業スタートを覚悟していたので、この結果には本当にほっとしました。
なぜこの会社が僕に電話をしてきたのか?
それは、僕が会社に勤めながらも、自分のコンサルティング業のホームページを作り、マーケティングに関するメールマガジンを継続的に発行していたからです。電話をくれた会社の経営幹部がこれを見てくれていました。あらためて情報発信の重要性を思い知った出来事であり、かつ、僕の大きな成功体験となりました。
ケンカしてしまった会社での引き継ぎ業務が残っていたので、退職するのは2か月後ということになっていました。その間、僕と社長とは口を利かず、目も合わせず、冷戦状態でした。自由にやらせてもらっていた仕事も、何かと監視されるようになり、ギクシャクしながらの毎日でした。
しかし、思い返せば、その社長にはいろんな面でお世話になっていました。試験に受からなかった僕を雇い、信頼を寄せてくれて、好きなように仕事をさせてくれました。そのおかげで仕事は楽しかったし、業績も伸び、人脈や見識も広がったし、何より生活が安定しました。そんなお世話になった社長と、このままケンカ別れをするのは少し寂しい気がしてきました。
それで僕は、自分だけでも変わろうと思い、態度を改めました。以前のようにきちんと挨拶したり、笑顔で仕事に取り組むように努めました。すると、社長の方も徐々に以前のように戻ってきて、結局、自然な形で仲直りすることができました。これは僕の人生において、本当に良かったと思えることのひとつです。
すると社長から「辞表を取り下げて、会社に残って欲しい」と言われました。しかし、コンサルティング業で起業する予定で、既にクライアントと契約していることを伝えると、「じゃあ、給与を半分にして、週の半分だけ出勤する契約形態でどうか?」という提案をされました。これは僕にとってもありがたい提案でしたので、喜んで契約することにしました。その時から、週の半分は以前の職場でサラリーマンとして安定収入を得ながら働き、残りの半分でコンサルティング事業を自分の事業として行うということになりました。
結局、振り返ると、この「2足のワラジ」スタイルが、僕の起業人生においてとても良かったと思います。中小企業診断士という資格を持っていたとはいうものの、所詮は経験の無いペーパードライバーです。1社目のクラインアントは運よく獲得できたものの、2社目、3社目がどうなるかが分からない中で、たとえ半分でも安定収入があるというのはとてつもなく大きなことでした。
2ステップ起業のメリット、デメリットを整理すると、
■メリット
①収入を安定させながら、立ち上がりが不安定な起業スタートを乗り切ることができる。
②家族の不安が減り、精神的にも安定する。
③起業の先輩である社長に、具体的にいろいろと相談できる。
■デメリット
①1本立ちするタイミングがつかめないと、ズルズルと中途半端な状態になる。
②時間に追われる。
③片方の仕事でトラブルがあると、もう一方の仕事に集中できなくなる。
小さな会社では、社長との距離が近く、信頼を勝ち取れれば、自分の有利な条件で交渉することがきます。大きな組織ではこうはいかないでしょう。僕も最初に勤めていた大手企業では、こういうスタイルで仕事をすることは許されなかったと思います。
その後、3年間に渡ってこの2足のワラジを履きながら体制を整えた後、僕は完全に独り立ちし、現在に至ります。この2ステップで起業したことが、少しずつ1人で生きることの耐性を高め、着実に事業を成長させるためにとても重要だったと、今、思います。
後さき考えず会社を辞めてしまう前に、小さな会社に転職し、有利な環境を整えながら自分の起業プランを組み立てていく「2ステップ起業」。
あなたの起業のヒントになれば幸いです。
豊田礼人
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